パターン設計を終えたらいよいよパターンレジストを作っていきます。
パターンレジストはフォトリソグラフィ法とパターンを直接転写する方法があります。
それぞれの特徴下の表にまとめておきます
フォトリソグラフィパターン転写
工程OHPフィルムなどに回路パターンを印刷したフォトマスクをポジ感光基板に重ね合わせ、紫外線で露光する。
その後、現像処理を行って露光された部分だけレジストを剥離させパターンを形成する。
パターン転写シートやOHPフィルムにレーザープリンタでパターンを印刷し、それを生基板に直接熱転写してパターンを形成する。
難易度★★★★☆(比較的難しい)
慣れるまで失敗することが多い。
失敗するとやり直しが不可能で、材料が無駄になる。
季節や、感光基板の経年劣化によって露光時間が変わる。
暗室、若しくはそれに近い環境が必要。
★★☆☆☆(簡単)
レーザープリンタとアイロンさえあれば比較的簡単にできる。
転写に失敗したときは、アセトンなどで清掃すれば何度でもリトライ可能。
ただし、転写フィルムは新たに印刷が必要。
作業時間1枚あたりおよそ30分~1時間1枚あたりおよそ10分~30分
コストパフォーマンス★☆☆☆☆(悪い)
一般人が購入できる感光基板は、ほぼサンハヤト製に限られており安いとはいえない。
失敗したとき、高価な基板が一瞬にしてゴミになる。
感光液を購入して生基板に塗布する方法もあるが、500mlで8000円ほどする上、保存期間が半年しかない。
露光設備が必要。
★★★★★(非常に良い)
生基板と転写フィルム、アイロン、レーザプリンタ、アセトンなどの材料は、いずれも売っている店が多く、入手性が良い。
製作費用は感光基板を使うときの半分から3分の1程度。
パターン精度★★★★★(非常に良い)
微細なピッチでも驚くほど綺麗にパターン形成できる。
パターン精度が必要な場合や、両面基板のパターンとする場合はこちらが有利。
★★☆☆☆(やや悪い)
微細ピッチには向かない。
パターン切れや転写不良でレジストが薄くなることがある。
基板サイズが大きくなればなるほど転写が難しくなる。
どちらも一長一短あって、一概にどちらがいいとは言えませんので、私は用途に合わせて使い分けるようにしています。

パターン転写する方法ですが、専用の転写シートが市販されていますのでそれを使うと良いでしょう。
少し高価ですが、Techniks社製のPress-n-Peel Blue Transfer Filmという転写シートがアマゾンで買えます。このシートは基板サイズが100mm×100mm位の片面基板のときは使いやすくてとても良いのですが、それ以上の基板サイズになるとうまく転写できません。
というのも専用のシートであるにも関わらず、熱でフィルムが伸縮・変形してシワができやすく、両面基板に転写すると表と裏のパターンが少しズレてしまいます。

パターンをレーザープリンタで印刷した転写シートと生基板を用意します。
生基板の銅箔面は酸化していたり汚れていたりするので、クリームクレンザーとスポンジで金属光沢が出るまで磨いて脱脂します。
脱脂した生基板の銅箔面と転写シートの印刷面が向かい合うように重ねてマスキングテープで動かないように固定します。
これをアイロンで上から押さえつけると熱で転写されます。
アイロンで転写するときは固い台の上に基板を置いて、上から真下に押さえつけるようにして全体を貼り付けていくのがポイントです。アイロンを滑らせながら押さえつけるとフィルムがずれて失敗します。
アイロンでやるのが面倒な方はラミネーターで代用可能です。
※ラミネーターの正しい使い方ではないので、参考にされる方は自己責任でお願いします。

私の場合、OHM製のLAM-816を改造して使っています。
改造といっても一度カバーを取り外して、中に入っているアルミ製のガイドを取り外すだけです。
ガイドはローラの直ぐ後ろについていて、こいつが付いていると1.6mm厚の基板を通したときに途中で突っかかって止まってしまいます。
ガイドが無くても特に問題ないので取り外してしまいましょう。
あとはカバーを元のとおりにつければ改造完了です。
ラミネーターの温度設定を最大にして先ほどの基板を通します。
1回通すだけでは不十分で、連続で10回くらい通してやります。
上の写真は2回目を通すときのものですが、シワができていて嫌な予感がします。
5回目くらいで完全にシワになったまま張り付いてしまったのでここで諦めてフィルムを取り外し、中途半端に転写されたパターンをアセトンとキムタオルでふき取ります。
やはりこのサイズの基板だとPress-n-Peel Blueでは難しそうです。
こういうときはOHPフィルムで転写します。
レーザープリンタ用のOHPフィルムなら何でも良いのですが、私はコクヨ製のVF-1410Nを使いました。
このOHPフィルムは印刷面が少し粘着質なので生基板に重ねたとき、いい感じに基板に張り付いてくれます。加えて熱にも強いようで、多少の加熱では伸縮しないのでシワになりません。
OHPフィルムに熱転写シートと同じ要領でパターンを印刷して、先ほどと同じ手順でラミネーターに15回くらい通します。
通し終えたら直ぐに水道水に浸して冷やします。
完全に冷えてからOHPフィルムを端からゆっくりとはがしていくと、パターンが生基板に転写されています。
転写ができたら、基板カッター若しくは、アクリルカッターで必要な基板サイズにトリミングします。
転写基板の写真を見てもらったら分かるかと思いますが、OHPフィルムで転写すると埃などが入って転写不良部が斑点模様になっていたり、転写されていても薄っすら銅色が透けているところもあります。また、細い配線パターンを良く見ると傷が入って切れていたりするので、転写不良の部分を「青のマッキー」で修正していきます。他の色でもできるかもしれませんが、青がいいみたいです。
もしインクがはみ出したりしてしまったときは、イソプロピルアルコールで綺麗にふき取りましょう。
エッチングしてしまった後では修正不可なので、この段階で転写不良が無いか念入りにパターンチェックしましょう。
転写不良部の修正が終われば転写工程は終わりです。

次はエッチングです。
ここまで来たら放置せず、直ぐにエッチング工程に進めてください。

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